地域医療構想は病床が減らすことが目的?地域医療構想に想定された医療費削減効果と実態について

◆地域医療構想の課題とは

地域医療構想を実現するにあたり、現在ある課題は「実質的には病床数を減らす政策」です。

日本は高齢化社会が進み、今後の病床必要数は増えていくと考えられています。現時点において、実は先進国の中では日本の病床数は突出して多くなっています。しかし、この病床数の多さが患者と医療費が増える要因になっている、という考え方もあります。医師経済学ではこれを「医師需要誘発仮説」と呼び、医師の判断で意思の需要を作り出せてしまう、つまり「病床を埋めるための診断」という逆説的な現象が起きている、というものです。

患者が増えることで医療費がかかる、公的医療保険における「国民医療費」はそれだけ増え、これらは社会保険料などから賄われます。つまり、高齢化社会が進むほど医療費が増えていくと、それだけ税金・社会保険料も増加していくので、その抑制として「過剰な病床の適正化」を行う必要が出てきたのです。

地域医療構想にあたり、国は各医療機関から「自院がどんな医療機能を提供しているか」という報告を受け取りました。その結果判明したのが、「高度急性期と急性期病床が将来的に余剰になる」「回復期病床は不足する」「慢性期病床は在宅医療に切り替える必要がある」ということです。試算の結果、余剰する病床数はおよそ83,000件となりました。

しかし、一度物理的に減らした病床がそう簡単に増やせないことは、現在のコロナ禍でも問題になっており、余剰削減にはより慎重な考えが必要になっています。
地域医療構想にはこうした課題をどう解決するのか、対策するのかも注目されています。